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ジョルジオ・アルマーニ(1934–2025) 優雅の極致、スーツを永遠の伝説にした男

DESIGNER / 2025-09-05

昨日、ファッション業界は偉大な時代の終わりを迎えました。ジョルジオ・アルマーニ氏が91歳で安らかに逝去されたことが、アルマーニ・グループから正式に発表されました

「レ・ジョルジオ」と称されることもあったその存在は、まさに静かな中にも強い存在感と品格があった方でした。世界中から弔意が寄せられ、彼の残したファッション界への影響の大きさを誰もが改めて感じています

医学生からディスプレイ担当へ

意外に思うかもしれませんが、「イタリアの至宝」と呼ばれたアルマーニ氏は、もともと医師を目指していた真面目な学生でした。戦争の影と幼少期の体験から医療を志しましたが、運命は彼をミラノの百貨店「ラ・リナシェンテ」のディスプレイ担当・バイヤーへと導きました。この迂回こそが、後のスーツ革命につながったのです。

セルジオ・ガレオッティ:恋人であり盟友

1975年、アルマーニ氏はパートナーのセルジオ・ガレオッティと共にブランドを創設しました。セルジオは資金やビジネスを担当し、アルマーニ氏はデザインに集中。1985年にセルジオが他界すると、アルマーニ氏は悲しみを力に変え、Armani Privé、エンポリオ・アルマーニ、Armani Jeansへと事業を拡大しました。

脱構築スーツ:重厚さを解放する革新

 1970〜80年代、スーツは「権威の制服」でした。アルマーニ氏はそれを解体し、柔らかい肩、軽量な素材、流れるようなラインで再構築。男性には自由を、女性には力強さを与えるスーツが誕生しました。

パワースーツ:女性の力に寄り添う服

1980年代、女性が社会で台頭する中、アルマーニ氏は「パワースーツ」を発表。広い肩、落ち着いた色調、クリーンなライン。それは男性服の借り物ではなく、女性の力を理解した最初の戦闘服でした。

静かなラグジュアリーの先駆

いま話題の「クワイエット・ラグジュアリー」。しかしその先駆者は80年代のアルマーニ氏でした。ロゴではなく、素材の質感や隠された縫製、光で変わる色合い。見えない贅沢こそが真のラグジュアリーだと教えてくれました。

ハリウッドとレッドカーペットの魔術師

1980年の映画『アメリカン・ジゴロ』でリチャード・ギアがアルマーニのスーツを纏い、一躍セックスシンボルに。その後、ジュリア・ロバーツやケイト・ブランシェット、ジョージ・クルーニーらがアルマーニの仕立てでレッドカーペットを制しました。

アルマーニ・スタイルは生活そのもの

Armani Beauty(リップ、Privé香水)、Armani/Casa(ミニマルな家具)、さらにDolciやFiori、Privé Clubまで。アルマーニは単なるファッションブランドではなく、24時間身を置けるライフスタイルそのものです。